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二重特許

 発明者または所有者が共通する複数の特許または特許出願の間で競合するクレームが存在することを二重特許(double patenting)と呼びます。この二重特許は、特許法第101条(35 U.S.C. 101)違反もしくは公的見地(public policy)を根拠として拒絶されます(MPEP §804)。

 二重特許の根拠となる他方の出願のクレームが審査に係属中の場合には、当該他方の出願が何らかの理由により特許されなければ二重特許の状態が解消されますので、その間は仮の二重特許拒絶(provisional double patenting rejection)が発行されます。そして、当該他方の出願が特許として登録された後には、その仮の拒絶は正式な拒絶として扱われることになります(MPEP §804 I.B.)。



要件

 二重特許が成立するためには、複数の特許または特許出願の間でクレームが競合し、かつ、発明者または所有者が共通することが要件となります。従って、クレームが競合していても、発明者および所有者が共通しない場合には、二重特許には該当しません。この場合、新規性(35 U.S.C. 102)要件等によって別途調整されることになります。

 なお、限定要求(restriction requirement)に応じてされた分割出願(divisional application)には、親出願との間の二重特許は適用されません(35 U.S.C. 121, MPEP §804.01)。限定要求は、審査官が2以上の独立した区別可能な発明が含まれていると認定した場合にされるものだからです。

種類

 二重特許は、一般に、以下の「同一発明型」と「非法定型」の2種類に分けることができます(MPEP §804)。

同一発明型(same invention type)

 複数の特許または特許出願の間で同一の発明がクレームされている場合には、この同一発明型二重特許に該当することになります。この同一発明型二重特許による拒絶の根拠は、特許法第101条(35 U.S.C. 101)です。この101条では、「発明者は"a patent"を取得することができる」と規定されており、同一の発明に対しては単一の特許しか与えられないものと解釈されています。

 この同一発明型二重特許による拒絶は、該当クレームの削除や補正により解消することができますが、後述のターミナルディスクレーマによっては解消することはできません(MPEP §804.02)。

非法定型(nonstatutory-type)

 複数の特許または特許出願の間で同一発明がクレームされていなくても、特許的に区別できない(not patentably distinguishing)クレームが含まれている場合には、この非法定型二重特許に該当することになります。この非法定型二重特許による拒絶の根拠は法上明定されたものではなく、特許期間の実質的な延長を妨げるという公的見地から判例に基づいて形成されたものです。この非法定型二重特許のほとんどは、一方の出願のクレームから自明な範囲にある他方の出願のクレームを排除するものであり、自明型(obviousness type)二重特許と呼ばれます。継続出願を行った際に先の出願を放棄せずに両者を共存させた場合に、その両者間で非法定型二重特許となることがしばしばあります。

 この非法定型二重特許による拒絶は、ターミナルディスクレーマ(terminal disclaimer; 期間放棄)により解消することができます(MPEP §804.02 II.)。このターミナルディスクレーマは、所有者が特許期間の一部を放棄する手続であり、一方の特許期間の終期を他方の特許の満了日と一致させることにより特許期間の実質的な延長を回避するものです(37 CFR 1.321(c), MPEP §1490)。このターミナルディスクレーマが提出された場合、それらの特許は分離して移転することができず、同一人により所有された状態でなければ権利行使することができません(MPEP §804.02, §1490 VI.)。このようなターミナルディスクレーマの考え方は大変合理的であり、期間延長ないし分離移転されることの不都合を解消しつつ、特許権者には最大限の保護を与える制度であると言えます。