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発明者

 2011年法改正によってグローバル化が図られるまでは、米国特許出願は発明者の名においてしなければなりませんでした(旧37 CFR 1.41(a))。また、特許公報においても筆頭発明者の名前が大きく記載され、その特許の代名詞としても用いられます。このように、米国特許出願では発明者の地位(inventorship)に対して相当な敬意が払われています。



発明者の決定

 発明には、案出(conception)および実施化(reduction to practice)の2段階がありますが、案出に貢献した者が発明者であり、単に実施化の作業を行っただけの者は発明者にはなりません(MPEP §2137.01)。従って、ある者が単独で発明を案出し実施化した場合にはその者が発明者となりますが、複数の者が案出または実施化に関与している場合には何れの者が案出に貢献したかを判断する必要があります。その結果、複数の者が案出に貢献している場合には、それら複数の者が共同発明者(joint inventors)となります。そのため、複数の者により研究開発を行う際には、案出に対する貢献の裏付けとなる証拠(例えば、研究記録や発明ノート等)を残しておくことが重要です(MPEP §2138.04)。

 共同発明者として出願するためには、(a)物理的に一緒にまたは同時期に作業をしている必要はなく、(b)各発明者の寄与の種類や度合いは同じでなくてもよく、また、(c)各発明者は全てのクレームに対して寄与していなくてもよい、と規定されています(35 U.S.C. 116(a), 37 CFR 1.45(b))。従って、例えば、クレーム1には発明者Aだけが寄与しており、クレーム2には発明者AおよびBが寄与しているような場合でも、これらクレーム1および2を含む特許出願を発明者AおよびBが共同して出願することができます。

 宣誓書等(oath or declaration)と同時またはそれより前に出願データシートが提出された場合、その出願データシートに従って発明者が認定されます(37 CFR 1.41(b))。一方、宣誓書等と同時またはそれより前に出願データシートが提出されなかった場合、宣誓書等に従って発明者が認定されます(37 CFR 1.41(b))。発明者が一旦認定された後に発明者を変更するためには、後述の発明者訂正手続が必要になります(37 CFR 1.48)。

発明者と出願人

 2011年法改正により、発明者だけでなく、発明者以外の譲受人(assignee)等も特許出願の出願人になることができるようになりました(35 U.S.C. 118, 37 CFR 1.42)。すなわち、特許出願する権利を発明者が譲渡し、または、譲渡する義務を有する相手方は、特許出願の出願人となることができます(37 CFR 1.46(a))。発明者以外によって出願される際には、譲受人等の情報を含む出願データシートを提出しなければなりません(37 CFR 1.46(b))。また、出願時に発明者が出願人となっていた案件について、出願人を譲受人に変更する場合には、譲受人が権限を有する旨の陳述書(37 CFR 3.73(c))を提出する必要があります。

 共同発明について一部の発明者が出願を拒み、もしくは勤勉な努力をしても一部の発明者に連絡がつかないような場合には、残りの発明者は共同発明者に代わって出願手続を遂行することができます(37 CFR 1.45(a))。

 なお、2011年法改正により、誤った発明者による出願(旧35 U.S.C. 102(f))については拒絶理由の項目から削除されましたが、法改正後は二重特許(35 U.S.C. 101)および宣誓書等(35 U.S.C. 115)の規定により拒絶されることが想定されています(MPEP §2151)。

発明者の訂正

 出願の過程において発明の内容が補正により変更された結果、発明者の訂正が必要になる場合があります。例えば、上述のように、クレーム1には発明者Aだけが寄与しており、クレーム2には発明者AおよびBが寄与しているような場合、補正によりクレーム2が削除されてクレーム1だけが残ったときには、Bを発明者から削除する補正を行う必要があります。これとは逆に、クレームの追加に伴って発明者を追加する補正が必要になる場合もあります。

 発明者を訂正する補正には、(1)発明者を訂正する旨の請求(request)、(2)発明者情報を含む出願データシート、および、(3)手数料(processing fee; 37 CFR 1.17(i))が必要になります(37 CFR 1.48(a))。また、発明者の追加を伴う場合には、追加される発明者による宣誓書等の提出が必要になります(37 CFR 1.48(b))。但し、発明者を追加するために従来必要とされていた陳述(statement)は、不要になりました。実体審査の拒絶通知がされた後に発明者を訂正する場合には、さらに原則として追加手数料(37 CFR 1.17(d))が加算されます(37 CFR 1.48(c))。

 なお、元の出願において少なくとも一人の正しい発明者の名前が記されている場合には、継続出願(37 CFR 1.53)をすることによっても適法に発明者の訂正を行うことができます(MPEP §602.01(c) III)。

 特許発行後に発明者を訂正する場合には、再発行出願(37 CFR 1.171, MPEP §1412.04)または訂正証明書(37 CFR 1.324, MPEP §1481)により訂正することも可能です(MPEP §602.01(c) II)。