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米国(アメリカ)特許に関する丸島敏一による個人的メモです。適宜更新していく予定です。

書籍「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」の第3版が刊行されました。

クラフト国際特許事務所

MPEP

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索引

101

特許対象

 米国特許法第101条(35 U.S.C. 101)は特許の対象となる発明について規定しています。この101条は、特許法の保護対象(subject matter)を規定するとともに、発明の有用性(utility)を要求しています。



35 U.S.C. 101
"Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title."


保護対象(subject matter)

 米国特許法第101条は、保護対象として、(A)プロセス(process)、(B)機械(machine)、(C)生産物(manufacture)、(D)組成物(composition of matter)、(E)これらの改良、の何れかに属することを要求しています。(A)は行為(action)を定義し、(B)から(D)は物(things)を定義しています。(B)から(D)は、(A)のプロセスと対比して、プロダクト(product)としてまとめて扱われることがあります。
 これに対して、抽象的概念(abstract idea)、自然法則(laws of nature)、自然現象(natural phenomena)は、判例上の例外(judicial exception)として、保護対象に含まれないと考えられています(MPEP §2106)。前者については実用的な用途(practical application)を示さないものに特許を付与すべきでなく、後二者については公的見地から先に占有(preemption)を認めるべきでない、というのがその理由です。

近年の最高裁判決

 保護対象の適格性については、近年立て続けに最高裁判決による見直しがされています。例えば、Mayo事件では、投薬方法のクレームについて、抽象的概念を特定技術で使用することに限定するだけでは特許の保護対象として適格性を満たさないと判示されています(Mayo Collaborative Serv. v. Prometheus Labs., Inc., 566 U.S. _, 132 S. Ct. 1289 (2012))。また、Myriad事件では、DNAクレームについて、天然に存在する遺伝子を分離すること自体は発明行為ではないとする一方で、自然の産物ではない人工的なcDNAは特許の保護対象として適格性を有するとの判示がされています(Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics, Inc., 569 U.S. _, 133 S. Ct. 2107 (2013))。さらに、Alice事件では、金融リスクを管理する方法のクレーム、システムクレームおよび記憶媒体クレームについて、一般的なコンピュータに抽象的概念を適用させただけであり、特許の保護対象として適格性を満たさないと判示されました(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int'l, 573 U.S. _, 134 S. Ct. 2347 (2014))。

審査ガイドライン

 上述の最高裁判決に対し、特許商標庁は2014年に予備審査指示書(Preliminary Examination Instructions)および暫定ガイダンス(2014 Interim Guidance on Patent Subject Matter Eligibility)を発表しています。これによると、クレームが上述の判例上の例外(抽象的概念、自然法則または自然現象)を対象とするものである場合(第1Mayoテスト)、その例外を著しく超えるほどの(significantly more than)追加的要素がクレーム全体として記載されていること(第2Mayoテスト)が、特許の保護対象としての適格性を満たすために必要であるとされています。但し、第1Mayoテストにおいて、クレームに記載(recite)されているものが判例上の例外を対象とするもの(directed to)であると判断するためには、自然物と比較して著しく異なる特徴(markedly different characteristics)が存在しないことが条件となります。著しく異なる特徴が存在する場合には、第2Mayoテストを経ることなく、特許の保護対象としての適格性を満たすものと判断されます。

有用性(utility)

 101条によれば、特許法による保護を受けるためには、発明が保護対象に該当することに加えて有用(useful)であることが要求されます。有用性が問題となるのは、次の2つの場合です。すなわち、第1に、出願人が特定の実在する有用性(specific and substantial utility)を認識できなかったために、または、十分な情報を開示できなかったために、その発明がなぜ有用であるのかが明らかにされていない場合、第2に、出願人による特定の実在する有用性の主張が信頼できない場合です(MPEP §2107.01)。ここで、「特定の」有用性が要求されますので、一般的な有用性では足りず、具体的なものであることが必要です。また、「実在する」有用性が要求されますので、現実の世界で利用するためにはさらに研究を要するような場合には有用性が欠如していることになります。

 有用性が欠如している場合には、明細書の記述要件(35 U.S.C. 112(a))の適用も問題となります。この記述要件では発明の使用方法を当業者が使用できる程度に記載することが求められていますが、もし発明に有用性がないとするとその使用方法を記載することができないからです。そこで、有用性の欠如を理由とする101条拒絶の際には、112条(a)による拒絶を同時に通知するような取り扱いがされています(MPEP §2107.01)。

101.txt · 最終更新: 2016/10/24 11:16 by marushima