この具体例では、発明者Aが、ある発明対象について発表Aをした後に、1年以内に出願Aをしたものと想定します。一方、発明者Bは、同じ発明対象について、発表Aよりも後に発表Bをして、出願Aよりも前に出願Bをしたものとします。以下では、発明者Aによる出願Aが102条の特許要件を満たすか否かについて検討します。
まず、発表Aは、出願Aよりも前に発明対象を公にしていますので、102条(a)(1)の先行技術になる可能性があります。しかし、発表Aは、発明者A本人による開示行為ですから102条(b)(1)(A)の例外規定が適用されて、先行技術から除外されます。
また、発表Bも、出願Aよりも前に発明対象を公にしていますので、102条(a)(1)の先行技術になる可能性があります。しかし、その発明対象は、発表Bの時点で、発明者Aの発表Aによって既に開示されていますので、102条(b)(1)(B)の例外規定が適用されて、先行技術から除外されます。
一方、出願Bは、出願Aよりも先願になりますので、102条(a)(2)の先行技術になる可能性があります。しかし、その発明対象は、出願Bの時点で、発明者Aの発表Aによって既に開示されていますので、102条(b)(2)(B)の例外規定が適用されて、先行技術から除外されます。
従って、発表Aの存在によって、出願Aが102条の先行技術から守られることがわかります。但し、発表Aが出願Aから遡って1年以前にされていた場合には、102条(b)(1)の例外規定が適用されませんので、出願Aは発表Aを先行技術として102条(a)(1)によって拒絶されることになります。