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米国(アメリカ)特許に関する丸島敏一による個人的メモです。適宜更新していく予定です。

書籍「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」の第3版が刊行されました。

クラフト国際特許事務所

MPEP

USPTO fee schedule

索引

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出願書類



必須書類

 特許出願の際には、以下の書類の提出および手続を行う必要があります(37 CFR 1.51(b))。

 「明細書」は発明の内容を文章により説明する書類です。「図面」は発明の内容を図示する書類です。

 「宣誓書」は表記された発明者が原発明者(original inventor)であると信じる等を述べるものであり(37 CFR 1.63(a)(3))、公証人等の前で宣誓して署名することにより作成されます。一方、「宣言書」は宣誓なしに作成されます。宣言書のみの様式もありますが、宣言書と譲渡書を組み合わせたフォームを使用することも可能です(37 CFR 1.63(e))。共同発明の場合、複数の発明者が別々の宣言書にサインすることもできます(MPEP §602.08(b))。

 「出願料」は特許商標庁による出願処理のために徴収される料金で、これには出願審査料も含まれています。

出願日認定要件

 これらのうち、「明細書」が特許商標庁に提出された日が出願日として認定されます(37 CFR 1.53(b))。2013年12月18日の特許法条約(PLT)批准に伴う規則改正により、「明細書」に「クレーム」を含むか否かは出願日認定要件から削除されました。出願時に「クレーム」が含まれていない場合には、追加料金の支払いを条件に補充の機会が与えられます(37 CFR 1.53(f), 1.16(f))。

 また、出願時に「宣誓書または宣言書」を提出せず、もしくは「出願料」を支払わなかった場合には、その旨が通知され、指定された期間内に条件を満たせば出願日は維持できます(37 CFR 1.53(f)(1))。但し、その場合には追加料金(surcharge; 37 CFR 1.16(e))の支払いが必要となります(37 CFR 1.53(f)(1))。一方、指定された期間内に応答しない場合には放棄されたものとみなされます(35 U.S.C. 111(a)(4))。

 なお、出願には連絡先(correspondence address)が必要であり、通常は出願データシートに記載されます(37 CFR 1.33(a))。この連絡先は出願人の自宅住所とは異なっていてもよく、代理人の事務所所在地が記載されるのが通例です(MPEP §601.01(a))。この連絡先がないと上述の書類不備を知らせる通知ができないため、この場合、出願日を維持するための手続は出願日から3ヶ月以内にしなければなりません(37 CFR 1.53(f)(2))。

連絡用書類

 また、上述の必須書類には、特許商標庁に対する連絡事項をまとめた以下の書類を添えることができます(37 CFR 1.77(a))。

  • 出願送付票(Utility Patent Application Transmittal)
  • 料金送付票(Fee Transmittal)
  • 出願データシート(ADS:Application Data Sheet)

 「出願送付票」は、各出願書類のチェックリストの役割を果たす用紙です。「料金送付票」は、「出願料」を計算するための用紙です。

 「出願データシート」は、出願に関する書誌情報をまとめたものであり、提出は任意です(37 CFR 1.76(a))。ただし、優先権主張を伴う出願、継続性のある出願、譲受人等が出願人となる出願については、提出は必須となります(37 CFR 1.76(a))。この「出願データシート」の書誌情報としては、(a)発明者情報(Inventor Information)、(b)連絡先情報(Correspondence Information)、(c)出願情報(Application Information)、(d)代理人情報(Representative Information)、(e)優先権情報(Domestic Priority Information、Foreign Priority Information)、(f)出願人情報(Applicant Information)があります(37 CFR 1.76(b))。外国出願の優先権を主張する場合には、この出願データシートにおける意思表示が必要です(37 CFR 1.55(d)(1))。

その他の書面

 さらに、上述の書類以外に、以下のような書面を必要に応じて提出することができます。

  • 委任状(Power of Attorney or Authorization of Agent; 37 CFR 1.34(b))
  • 譲渡証(Assignment; 37 CFR 3.11(a))

 「委任状」は、出願人が代理人に対して代理権を委譲したことを示す書面です。特許商標庁に対する手続は代理人により行うことができますが、そのためにはその案件の代理権を有することを示す「委任状」を提出しておく必要があります(37 CFR 1.34(b))。

 なお、特許出願について代理人となり得るのは、原則として特許弁護士(Patent Attorney)または弁理士(Patent Agent)に限られます。何れかの州の弁護士(Attorney)であって弁理士試験(Registration Examination / Patent Bar Exam)に合格した者は特許弁護士として、また、弁護士でない者であって弁理士試験に合格した者は弁理士として、特許商標庁に登録することができます(37 CFR 10.6)。米国民以外の米国居住者(resident alien)の場合は、特定された案件のみについて手続が認められる(limited recognition)ことがあります(37 CFR 10.9)。

 「譲渡証」は、特許出願に係る権利(または特許権)が第三者に譲渡されたことを証明する書面です。米国の場合、出願人は発明者に限られていましたが(37 CFR 1.41(a))、特許出願に係る権利(または特許権)を第三者に譲渡することはできます(35 U.S.C. 261, 37 CFR 1.46, 37 CFR 3.1)。この譲渡の事実を証明するために提出されるのが「譲渡証」です。特許商標庁に提出された「譲渡証」は登記(recordation)されます(37 CFR 3.11(a))。特許商標庁は譲渡の有効性について決定する権限はありませんが、「譲渡証」が提出された場合には譲渡が有効に行われたものとして取り扱うことになっています(MPEP §317.02)。この「譲渡証」では、当事者(譲渡人および譲受人)が住所(所在地)および氏名(名称)により特定され、譲渡対象が発明の名称などにより特定されます。また、英語以外の言語により作成された「譲渡証」が登記されるためには、英語による翻訳文の添付が必要になります(37 CFR 3.26)。なお、従業員が特許出願に係る権利を雇用者に譲渡することなく特許を受けた場合、雇用者には無償の実施権(shop right)が判例上認められていますが、その成否について争いを生じることもありますので、雇用者としては予め従業員に「譲渡証」を提出させておくべきです。

apl.txt · 最終更新: 2016/10/24 11:06 by marushima