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米国(アメリカ)特許に関する丸島敏一による個人的メモです。適宜更新していく予定です。

書籍「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」の第3版が刊行されました。

クラフト国際特許事務所

MPEP

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索引

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参照による引用



 他の文献を参照して引用(Incorporation by Reference)することにより、明細書の記載内容を省略することが出来る場合があります(MPEP §2163.07(b))。この場合、対象文献を明確にした上で、「参照による引用」を行う旨を明細書中に明示する必要があります(37 CFR 1.57(c))。例えば、以下のような記載です。


"This application claims the benefit of foreign priority to Japanese Patent Application No. JP2015-000000, filed January 0, 2015, which is incorporated by reference in its entirety."


例外

 ただし、規則改正により2004年9月21日以降は、優先権主張等を伴う場合には、明示されていなくても「参照による引用」がされているものとみなされます(37 CFR 1.57(b))。これにより、ページ抜けや誤訳等を救済することが可能となりました。

 また、2013年12月18日の特許法条約(PLT)批准に伴う規則改正により、出願データシートにおいて先行する出願を英語により参照することにより、明細書および図面を置換することが可能になりました(37 CFR 1.57(a), 35 U.S.C. 111(c))。

文献の基準

 現行の基準では以下のように本質的事項(essential material)と非本質的事項(non-essential material)とに分けて、引用対象文献を定めています(37 CFR 1.57(d)-(e), MPEP §608.01(p))。

(a) 本質的事項(essential material)
 本質的事項とは、上述の112条(a)の3要件を満たすために必要な事項を意味します。この本質的事項については、「参照による引用」を利用していない米国特許または米国公開出願を引用対象文献として「参照による引用」をすることが許容されます(37 CFR 1.57(d))。ただし、外国特許または出願、非特許刊行物、自身が「参照による引用」をしている米国特許または出願をもって「参照による引用」をすることはできません(MPEP §608.01(p))。

(b) 非本質的事項(non-essential material)
 非本質的事項とは上述の本質的事項以外の事項であり、例えば、発明の背景や従来技術の欄がこれに該当します(MPEP §608.01(p))。この非本質的事項については、公開済の内外国特許または出願、自己(commonly owned)の未公開米国先願出願、特許以外の刊行物を引用対象文献として「参照による引用」をすることができますが、URLを用いたハイパーリンクによる「参照による引用」は認められません(37 CFR 1.57(e))。

違反時の治癒

 これらの基準(37 CFR 1.57(c)-(e))に違反している場合であっても、審査終了までは訂正することができます(37 CFR 1.57(h))。すなわち、「参照による引用」の内容を明細書に反映させる補正を行うことができます(37 CFR 1.57(g))。

 例えば、米国特許出願の明細書において、日本出願の明細書の記載内容を「参照して引用」した上で、当該記載内容に基づいたクレームを作成した場合には、最初の拒絶通知において、審査官から補正を要求されること(37 CFR 1.57(g))が予想されます(MPEP §608.01(p))。これに対し、出願人は、補正により日本出願の記載内容を追加することができます(37 CFR 1.57(h))。

 同様に、米国特許出願の当初には、日本出願の明細書を「参照して引用」した記載に基づくクレームを作成せず、拒絶通知対応の際にクレームアップした場合には、次の拒絶通知において、新規事項追加の拒絶となること(35 U.S.C. 112(a))が予想されます(MPEP §608.01(p))。これに対し、出願人は、補正により日本出願の記載内容を追加することができます(37 CFR 1.57(h))。但し、この場合、さらに審査を継続させるためにはRCEが必要となる可能性が高いと考えられます。

ibr.txt · 最終更新: 2016/10/24 11:08 by marushima