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米国(アメリカ)特許に関する丸島敏一による個人的メモです。適宜更新していく予定です。

書籍「MPEPの要点が解る 米国特許制度解説」の第3版が刊行されました。

クラフト国際特許事務所

MPEP

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明細書の形式

 明細書の各項目は以下の順序で記載すべきであり、これらは大文字による見出し(下線や強調を施さない)で始まることが望ましいとされています(37 CFR 1.77(b),(c), MPEP§601)。記載すべき内容が存在しない項目については"Not Applicable"との語句を記載すべきとされていますが(MPEP§601.01(a))、実際には、不要な項目は省略されることが多いようです。



  1. 発明の名称(Title of the Invention)
  2. 関連する出願の参照(Cross-Reference to Related Applications)
  3. 連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載(Statement Regarding Federally Sponsored Research or Development)
  4. 共同研究契約のある当事者(The names of the parties to a joint research agreement)
  5. シーケンスリスト等の参照(Reference to a "Sequence Listing," a table, or a computer program listing appendix submitted on a compact disc and an incorporation-by-reference of the material on the compact disc)
  6. 発明者等による先開示の記載(Statement regarding prior disclosures by the inventor or a joint inventor)
  7. 発明の背景(Background of the Invention)
  8. 発明の概要(Brief Summary of the Invention)
  9. 図面の簡単な説明(Brief Description of the Several Views of the Drawing)
  10. 発明の詳細な説明(Detailed Description of the Invention)
  11. クレーム(Claims)
  12. 要約文(Abstract of the Disclosure)

発明の名称

 「発明の名称」は500字を超えない範囲で、可能な限り短くかつ発明を特定できるものでなければなりません(37 CFR 1.72(a))。例えば"Information Processing Apparatus"のように、発明を特定するのに十分でない場合には、"Title of Invention Is Not Descriptive"との理由により、審査官から「発明の名称」の変更が要求されます(MPEP §606.01)。なお、この「発明の名称」は、出願データシートに記載されている場合には明細書中に記載する必要はありません(37 CFR 1.72(a))。

関連する出願の参照

 「関連する出願の参照」は、先の出願の利益を受けようとする場合に、継続出願や分割出願の親出願、または仮出願などを参照するものです。例えば、
"This is a division (continuation, continuation-in-part) of Application No. —, filed —, now abandoned, which claims the benefit of U.S. Provisional Application No. 60/—, filed —."
といった記載が必要になります(MPEP §201.11)。なお、この「関連する出願の参照」は、出願データシートに記載されている場合には、その内容が明細書中に記載されたものとして取り扱われます(37 CFR 1.76(b)(5))。

連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載

 「連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載」は、連邦政府による資金提供を受けた研究開発について権利を留保して(連邦政府に権利譲渡しないで)出願する場合、以下のような記載が必要になります(MPEP §310)。
"The U.S. Government has a paid-up license in this invention and the right in limited circumstances to require the patent owner to license others on reasonable terms as provided for by the terms of (contract No. or Grant No.) awarded by (Agency)."

共同研究契約のある当事者

 「共同研究契約のある当事者」は、共同発明者を明らかにするための記載です(MPEP §2156)。これにより、その共同発明者による開示は本人によるものとみなされて(35 USC 102(c)(3))、先行技術から除外されます(35 U.S.C. 102((b)(2)(C))。

シーケンスリスト等の参照

 「シーケンスリスト等の参照」は、 (i)コンピュータ関連出願におけるコンピュータプログラミングリスト(computer program listing)、(ii)バイオ関連出願におけるヌクレオチドやアミノ酸のシーケンスリスト(Sequence Listing)、または、(iii)化学または数学に関する表(table)をCD(コンパクトディスク)に記録して提出する場合に、そのCDの内容を明細書の内容の一部とするために参照するものです(37 CFR 1.52(e)(5))。この参照では、CDの枚数(複製を含む)および各CD中のファイルを特定する必要があります(37 CFR 1.77(b)(4))。

発明者等による先開示の記載

 「発明者等による先開示の記載」は、発明者または共同発明者による先開示を明らかにするための記載です(MPEP §2153.01(a))。発明者等による開示は、先行技術から除外されます(35 U.S.C. 102((b)(1)(A))。

発明の背景

 「発明の背景」は、通常、「発明の分野(Field of the Invention)」および「関連技術の説明(Description of the related art)」の2つから構成されます(MPEP §608.01(c))。「発明の分野」としては、出願に係る発明の属する技術分野が記載されます。「関連技術の説明」としては、出願人の知っている先行技術やその他の情報、ならびにその先行技術等の有する問題点が記載されます。また、この「関連技術の説明」には、「情報開示陳述書(IDS)」として提出すべき先行技術を含めることができます。

発明の概要

 「発明の概要」は、発明の要旨を示すものであり、発明の目的に関する記載を含めることができるようになっています(37 CFR 1.73)。この「発明の概要」の記載は、クレームに記載された発明に相応しなければなりません(37 CFR 1.73)。

図面の簡単な説明

 「図面の簡単な説明」は、出願に含まれる図面についてそれぞれ簡単に説明するものであり、詳細な説明については次の「発明の詳細な説明」に記載されます(37 CFR 1.74)。

発明の詳細な説明

 「発明の詳細な説明」には、当業者が過度な実験を行うことなくその発明を製造し使用できる程度に、詳細に発明の説明を記載する必要があります(MPEP §608.01(g))。その際、理解可能な範囲内において自身で用語を定義することができます。また、この「発明の詳細な説明」における記載は、クレーム中で用いられる用語に明確に対応する必要があります。

クレーム

 「クレーム」は、明細書において出願人が自己の発明であると考える主題を特定的に指示し且つ明確に主張するものであり(35 U.S.C. 112 2nd, 37 CFR 1.75(a))、明細書の他の記載内容と整合がとれていることが要求されます(37 CFR 1.75(d)(1))。このクレームは、審査対象となる発明を特定する機能を有するとともに、侵害成否の判断対象となる発明を特定する機能を有します。

要約文

 「要約文」は発明を分かり易く説明するように(in narrative form)、50~150語からなる1つの段落により構成しなければなりません(MPEP §608.01(b))。従前は50~250語の範囲となっていましたが、2000年規則改正により150語を超えてはならないことになりました(37 CFR 1.72(b))。また、要約文では法律用語(例えば、"means","said")を避けるべきとされています(MPEP §608.01(b))。
 なお、日本の特許法では特許発明の技術的範囲を定める際に要約書の記載を考慮してはならない旨の規定がありますが(日本特許法70条3項)、米国では「要約文」をクレーム解釈に利用することを禁止する規定が2003年規則改正により削除されています(37 CFR 1.72(b))。従って、この「要約文」もクレーム解釈に利用される可能性があることを念頭において、安易に発明を限定しないよう留意して記載しなければなりません。

段落番号について

 「クレーム」および「要約文」以外については、各段落(paragraph)の先頭に4桁の連続番号を段落番号として角括弧で囲んで(例えば、[0001]のように)示すことができます(37 CFR 1.52(6))。この段落番号は、補正をする際に利用されます。
 なお、日本の特許出願においてもこのような段落番号が用いられておりますが、4桁の連続番号を"すみ付き括弧"で囲む点が微妙に異なります。

spec.txt · 最終更新: 2016/10/24 11:06 by marushima